最近の研究成果

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がん組織では p53 の半分が変異して本来の作用が失われるとともに、がん化を進行させる新たな機能を獲得しています。そこで変異型 p53 を減少、あるいは野生型様の作用を回復させる化合物を探索しました。真菌から単離した pestone A  は、担ガンマウスの腫瘍を縮小させたが、細胞サーマルシフトアッセイにより変異型 p53 に結合しコンフォメーションを変化させたと推定しています。

Pestones A and B from a fungus Pestalotiopsis sp. bound to mutant p53 and changed its conformation.
Y. Sadahiro, M. Okubo, Y. Hitora, N. Hitora-Imamura, S. Kotani, S. Tsukamoto.
J. Nat. Prod.
88, 546-553 (2025).

 

 

骨粗鬆症の治療・予防薬シーズの探索のため、従来は、分化した細胞を染色して目視で観察していたので、効率が悪く観察者による誤差が生じました (a)。そこで、未染色の細胞画像をAI画像分類モデルにより評価する方法を構築し、真菌から pinolidotoxin を単離しました (b)。すなわち、先端技術の活用により分化阻害活性を高い精度で迅速に評価することを可能にしました。

Machine learning accelerates screening of osteoclast differentiation inhibitors from natural products.
Y. Hitora, M. Hokaguchi, Y. Sadahiro, T. Higaki, S. Tsukamoto.
J. Nat. Prod. 87, 2393-2397 (2024).

 

 

有明海の干潟で採取した真菌のエキスを LC-MS/MS 分析した後、feature-based molecular networking 解析し、新規 adenopeptin 類縁体として higapeptin を単離しました。Higapeptin は、ミトコンドリアのエネルギー代謝を阻害することを見出しました。

A new linear peptide, higapeptin, isolated from the mud flat-derived fungus Acremonium persicinum inhibits mitochondrial energy metabolism.
A. H. El-Desoky, Y. Hitora, Y. Nishime, Y. Sadahiro, T. Kawahara, S. Tsukamoto. 
J. Nat. Med. 78, 505-513 (2024).

 

 

インドネシアで採集した海綿から、新規の環状ペプチドを単離し neopetromin と命名しました。構造解析の結果、トリプトファンの窒素とチロシンの芳香環とが架橋していることがわかりました。Neopetromin でタバコ BY-2 細胞を処理すると、液胞が断片化されることを見出しました。アクチンには影響を与えずに断片化させる現象は、初めての発見となります。

Neopetromin, a cyclic tripeptide with a C−N crosslink, from the marine sponge Neopetrosia sp. that causes vacuole fragmentation in tobacco BY-2 cells.
Y. Hitora, A. H. El-Desoky, Y. Sadahiro, A. Sejiyama, A. Kinoshita, Y. Ise, E. D. Angkouw, R. E. P. Mangindaan, T. Higaki, S. Tsukamoto.
J. Nat. Prod. 87, 1197-1202 (2004).

 

 

細胞内のタンパク質は、ユビキチン-プロテアソームシステムにおいて 26S プロテアソームの働きにより ATP 依存的に分解されます。一方、内因性変性タンパク質は、 ユビキチン化されることなく ATP 非依存的に分解されます。内因性変性タンパク質の蓄積は神経変性疾患の発症に関係していますが、内因性変性タンパク質が 20S プロテアソームにより分解されるためには、プロテアソームの内部に通じるゲートを開口させる必要があります。そこで、天然物ライブラリーから 20S プロテアソーム活性化物質を探索し syrosingopin を見出しました。 Syrosingopin は、パーキンソン病の発症と関連する α-synuclein の分解を活性化させることを確認しました。

Syrosingopine enhances 20S proteasome activity and degradation of α-synuclein. 
Y. Sadahiro, S. Nishimura, Y. Hitora, S. Tsukamoto. 
J. Nat. Prod. 87, 554-559 (2024).

 

 

がん治療薬の候補化合物を探索するため、HeLa/Fucci2 細胞を用いた蛍光イメージングにより細胞周期阻害物質のスクリーニングを行いました。そして、Akanthomyces 属真菌のエキスから新規 aphidicolin 類縁体を単離し、Akanthomins A–C と命名しました。Akanthomin A は、細胞周期を S期で停止させることを見出しました。

Akanthomins A–C, aphidicolin analogs from a fungus Akanthomyces sp., that inhibit cell cycle.
K. Honda, Y. Hitora, S. Tsukamoto.
Phytochemistry 216, 113885 (2023).

 

 

 

骨は新陳代謝をしており、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスが維持されることにより、健康な骨が維持されます。そして骨粗鬆症は、骨吸収の亢進により骨量が減少し骨折の危険性が増大する疾患です。私たちは、多核破骨細胞の形成を阻害する成分を天然資源から探索していますが、インドネシアで採集した海綿から塩素を含む新規テルペン Aaptocarbamates A−G を単離しました。

Aaptocarbamates A−G, chlorinated terpene carbamates with antiosteoclastogenic activities from the marine sponge Aaptos sp.
H. El-Desoky, K. Eguchi, I. Kagiyama, Y. Hitora, H. Kato, Y. Ise, F. Losung, R. E. P. Mangindaan, S. Tsukamoto.
Phytochemistry 216, 113872 (2023).

 

 

熊本県の土壌から採取した真菌エキスを LC-MS 解析したところ、共役系を有する新規化合物の存在が示唆されたので精製し、新規 monoacylglyceryltrimethylhomoserine 誘導体21F121-A を単離しました。 Monoacylglyceryltrimethylhomoserine 誘導体の発見は、21F121-A が4例目で、分枝ペンタエン鎖を有することも特徴といえます。

A monoacylglyceryltrimethylhomoserine, 21F121-A, containing a branched acyl group from Penicillium glaucoroseum
I. Kimura, Y. Hitora, Y. Sadahiro, T. Kawahara, A. H. El-Desoky, S. Tsukamoto. 
J. Nat. Med. 77, 992-997 (2023).

 

エジプトで採集した薬用植物のエキスを用いて、破骨細胞に対する分化阻害作用をスクリーニングし、パーオキシド構造を有する新規テルペン arteperoxides A–C を単離しました。絶対立体配置はパーオキシドがエーテルに置換された化合物を合成し、各種スペクトルを比較し決定しました。

Arteperoxides A–C, tris-normonoterpene–sesquiterpene conjugates with peroxide-bridges from Artemisia judaica exhibiting antiosteoclastogenic activity.
A. H. El-Desoky, T. Asano, Y. Maeyama, H. Kato, Y. Hitora, E. Goto, S. Kotani, M. Nakajima, S. Tsukamoto.
Phytochemistry 206, 113548 (2023).

 

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